2割特例のあと簡易課税に切り替えるには?届出の期限と注意点
公開:2026年10月28日 運営:合同会社chillax
簡易課税は、業種ごとに決まった率で消費税を計算する方法で、使うには届出が必要です。2割特例・3割特例を使った翌年から切り替える場合は、届出の期限が遅くてよい特例があります。
簡易課税とは
売上にかかる消費税に、業種ごとの「みなし仕入率」を掛けた額を、仕入れの消費税とみなして差し引く方法です。実際の経費を集計しなくてよく、受け取ったインボイスを保存しなくても納付額を計算できます。
- 使えるのは、基準期間(個人は2年前)の課税売上高が5,000万円以下の年
- 「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要
業種ごとのみなし仕入率
| 区分 | 主な業種 | 率 |
|---|---|---|
| 第1種 | 卸売業 | 90% |
| 第2種 | 小売業、農林漁業のうち飲食料品の販売 | 80% |
| 第3種 | 製造業、建設業、農林漁業(飲食料品以外)など | 70% |
| 第4種 | 飲食店業など、ほかに当てはまらない事業 | 60% |
| 第5種 | 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) | 50% |
| 第6種 | 不動産業 | 40% |
複数の事業をしている場合は、事業ごとに区分して計算します。1つの事業の売上が全体の75%以上なら、その事業の率を全体に使える特例もあります。売上を事業ごとに分けていないと、分けていない部分には、その中で一番低い率が使われます。区分に迷うときは、税務署か税理士に確認しましょう。
フリーランスの職種と区分の例
- デザイナー、ライター、エンジニア、コンサルタントなど:第5種(サービス業)
- ハンドメイド作家など、自分で作った物を売る:第3種(製造業。製造小売業を含む)
- 製造業にあたる加工(縫製・部品の加工など)を、材料の支給を受けて請け負い、加工賃をもらう:第4種(写真や動画の加工などのサービスは第5種)
- 仕入れた商品を形を変えずに消費者に売る:第2種(小売業)
- 仕入れた商品を形を変えずにほかの事業者に売る:第1種(卸売業)
これは一般的な例です。同じ職種でも、仕事の中身によって区分が変わることがあります(自分で本を出版して売る場合は第3種など)。
届出の期限
原則は、簡易課税を使いたい年(課税期間)が始まる前日までに届出書を出します。個人事業主なら、使いたい年の前の年の12月31日までです。
ただし、令和8年度の税制改正で、2割特例・3割特例を使った翌年から簡易課税にする場合は、その年の申告期限までに届出すればよいことになりました。国税庁の例では、2028年分に3割特例を使い、2029年分から簡易課税にする場合、届出は2030年4月1日までに出せば足ります。
個人事業主の場合の目安を年ごとにまとめると、次のとおりです。
| 簡易課税を始める年 | 前の年 | 届出の期限 |
|---|---|---|
| 2026年分 | 2割特例を使った | 2027年3月31日 |
| 2027年分 | 2割特例を使った | 2028年3月31日 |
| 2028年分 | 3割特例を使った | 2029年4月2日(3月31日が土曜のため) |
| 2029年分 | 3割特例を使った | 2030年4月1日 |
| どの年でも | 特例を使っていない(原則) | 始める年の前の年の12月31日 |
インボイス登録をした年などは、その年の12月31日まででよい場合があります。届出書の名前は「消費税簡易課税制度選択届出書」で、納税地の税務署に出します。どの年にどの特例を使ったかで期限が変わるので、切り替える前に税務署か税理士に確認すると安心です。
一般課税とどちらが少ない?経費で決まる
一般課税は、売上の消費税から、実際に払った経費の消費税を差し引く方法です。標準税率(10%)だけで、売上も経費も税抜で単純に比べると、消費税のかかる経費が「売上 × みなし仕入率」より多ければ、一般課税のほうが少なくなります。税抜売上500万円の場合の境目は次のとおりです。
| 区分 | 一般課税が少なくなる経費(税抜) |
|---|---|
| 第1種(90%) | 450万円 |
| 第2種(80%) | 400万円 |
| 第3種(70%) | 350万円 |
| 第4種(60%) | 300万円 |
| 第5種(50%) | 250万円 |
| 第6種(40%) | 200万円 |
- ここでいう経費は、消費税がかかるもの(材料、外注費、事務所の家賃、通信費など)です。人件費や税金、保険料などは含みません。自宅の家賃は住宅の貸付で非課税のため、仕事用に按分した分も通常は含みません。
- 一般課税で経費の消費税を差し引くには、原則としてインボイスなどの保存が必要です。免税事業者からの仕入れは、差し引ける割合が段階的に減ります。
- 大きな設備を買った年などは、一般課税なら還付を受けられることがありますが、簡易課税では通常は還付になりません。
よくある質問
簡易課税をやめたいときは?
やめたい年の前の年の12月31日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を出します。ただし、少なくとも2年間は続けて使う決まりがあります。やめる届出は、届出の効力が始まった年から数えて2年目に入ってから出せるので、やめられるのは早くても3年目からです(事業をやめた場合などを除く)。
売上が5,000万円を超えたら?
基準期間(2年前)の売上が5,000万円を超える年は、届出をしていても簡易課税は使えず、一般課税で計算します。その後、基準期間の売上が5,000万円以下に戻れば、やめる届出を出していない限り、また簡易課税で計算します。
届出を出すと、2割特例や3割特例は使えなくなりますか?
国税庁は、簡易課税の届出書を出していても、申告のときに2割特例を選べると説明しています。3割特例も2割特例と同じく、事前の届出なしに申告書に記載して使う仕組みです。届出を出している年に3割特例を使う場合は、念のため税務署に確認してください。
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出典
- 国税庁 タックスアンサー No.6505「簡易課税制度」
- 国税庁 タックスアンサー No.6509「簡易課税制度の事業区分」
- 国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス関係)」
- 国税庁 インボイスQ&A 問117(2割特例・3割特例のあとの簡易課税の選択)
この記事は一般的な情報です。個別のケースの判断は、税務署または税理士にご確認ください。